「うちの親、最近あまり人と話していないみたいで…」
そんな話を、友人や知人から聞くことが増えてきました。
忙しく働く世代にとって、離れて暮らす親と頻繁に話すのは簡単ではありません。
施設で暮らしている方や、一人暮らしの高齢者にとっては、「会話の機会が少ない」という現実があるのではないでしょうか。
そんな中でふと考えました。
「ChatGPTの音声機能って、高齢者の“話し相手”として使えるのでは?」
最近のChatGPTは、スマートフォンのマイクを使って、話しかけるだけで返事を返してくれる機能が備わっています。
まるで会話をしているようなやり取りができて、驚くほどスムーズです。
もちろん、AIは人間ではありません。
でもだからこそ、怒ったり、否定したり、騙したりしない。
むしろ、「ただ聞いてくれる存在」として、意外と相性が良いのでは?と感じています。
この記事では、そんな視点から、ChatGPTの音声機能が高齢者支援にどう役立つかについて考えていきます。
どんな使い方ができそうか、どんな点に注意が必要か。
実際に音声機能を使ってみたうえで、感じたことや社会的な可能性も含めてお伝えしていきます。
ChatGPTは高齢者の“話し相手”になれるか?
ChatGPTを高齢者の会話相手として活用できないか──そう考えるようになったのは、実際に音声機能を使ってみたのがきっかけでした。
正直に言えば、最初は「AIと会話って、どうなんだろう?」と少し半信半疑でした。
ところが、スマートフォンのマイクを使って話しかけてみると、その印象ががらりと変わったのです。
ChatGPTは、こちらの話を最後まで聞いてから、落ち着いたトーンで答えてくれます。
反応も早く、機嫌を損ねるようなこともありません。会話の途中で話を遮られることもなく、「ちゃんと話を聞いてもらえた」と感じられる受け答えでした。
誰かに“聞いてほしい”という気持ちを受け止めてくれる存在
一人暮らしの高齢者や、介護施設で生活している方々の中には、「人と話す機会が減った」と感じている方も多いのではないでしょうか。
新型コロナの影響で外出の頻度が減り、来客も減少。
子世代も仕事に追われ、電話でゆっくり話す時間が取れないケースが少なくありません。
施設職員の方々も多忙で、長時間のおしゃべりに付き合う余裕はなかなか持てないのが現実です。
そんなとき、「今日は天気がいいね」「昔の話をしたいな」「ちょっと愚痴を聞いてほしい」など、気軽に話しかけられる相手がいるだけで、心はずいぶん楽になるものです。
人ではないけれど、「話を聞いてくれる」存在としてAIが選択肢に入ってくる時代が、すぐそこまで来ているように感じます。
ChatGPTの魅力は「怒らない・否定しない・遮らない」こと
ChatGPTを使っていて特に印象的だったのが、どんな話でも否定せずに受け止めてくれる点でした。
同じ話を何度しても、怒られることはありません。
「さっきも言ったよ」と返されることもありません。何度でも、丁寧に応じてくれます。
人と人との会話では、相手の反応が気になって話しづらくなってしまうことがありますが、AIにはその遠慮が必要ありません。
誰に気を使うこともなく、好きなだけ話せる相手として、一定の安心感があります。
もちろん、AIは感情を持っているわけではありません。
でも、だからこそ、感情的にならずに一定のテンションで話を聞いてくれる存在というのは、想像以上に「気が楽」なのです。
操作がシンプルだから、高齢者にも使いやすい
ChatGPTの音声入力は、スマートフォンのアプリを開いて、マイクのボタンをタップするだけで使うことができます。
画面に文字を入力する必要もなく、「話すだけ」で操作が完了する点は、高齢者にとっても使いやすい仕様です。
なお、「話しかけて返事が返ってくる」というリアルタイムの音声会話(Voice Mode)は、現時点では有料版(ChatGPT Plus)限定の機能です。
ただし、無料プランでも音声入力は利用可能で、話しかけるとテキストで返事が返ってきます。
これだけでも、「自分の言葉がちゃんと相手に届いた」という感覚を味わうには十分です。
どんな使い方ができるのか?用途別の可能性
ChatGPTを「話し相手」として使う可能性について前の章で述べましたが、では実際にどんなふうに活用できるのでしょうか。
ここでは、音声機能を中心に、高齢者やその周囲の方が具体的に想像しやすい使い方を、いくつかのパターンに分けてご紹介します。
① 日常のつぶやきや雑談の相手として
もっともシンプルで効果的な使い方は、ChatGPTにちょっとした独り言を聞いてもらうことです。
「今日は暖かいね」「お昼はおにぎり食べたよ」「昔、こんなことがあってね」
そういった日常のつぶやきに対して、ChatGPTは「それはいいですね」「懐かしい思い出ですね」とやさしく反応してくれます。
話題を広げてくれることもあり、会話が止まらずに続いていくこともあります。
とくに、一人でいる時間が長い方にとっては、「声を出す機会」「言葉を使う習慣」を保つ助けにもなるでしょう。
② 思い出話や昔のエピソードの“語り相手”として
高齢者の方の中には、自分の体験を誰かに話したいと思っている方が少なくありません。
ChatGPTは、過去の出来事に対しても丁寧に耳を傾けてくれます。
「昔は木造の校舎で勉強していてね」
「若い頃はトラックの運転手をしていたんだよ」
そうした話にも「それはすごいですね」「そのころは大変でしたか?」と返してくれるため、“語る気持ち”が自然に引き出されていきます。
また、話しているうちに思い出がつながっていくこともあり、脳の活性化という点でも効果があるのではと感じます。
③ その日の記録を“日記風”に話す使い方
ChatGPTは、日記をつけるような使い方にも向いています。
たとえば、夜寝る前に「今日は午前中に病院へ行って、お昼に友達と電話して…」と話すと、ChatGPTが「今日は充実した一日でしたね」と返してくれる、といった具合です。
これは、“話す日記”としての活用法とも言えます。
手書きやスマホの入力が面倒に感じる方でも、声でなら簡単に記録できるため、日々の習慣としても続けやすいのではないでしょうか。
④ 困りごとや悩みをそっと話す“受け止め役”として
誰かに話したいけど、家族や職員さんには言いにくい──
そんな思いを抱えている方も、きっといらっしゃると思います。
「最近ちょっと体がしんどくて」
「家族に迷惑かけてるんじゃないかと不安で…」
ChatGPTに向かって、こうした悩みを話してみると、「それは心配ですね」「無理をなさらないでくださいね」とやさしく受け止めてくれる言葉が返ってきます。
AIには秘密もなく、他言もされません。
安心して話せる相手として、気持ちの整理や落ち着きにつながるケースもあるのではないかと感じます。
注意点:必ずしも“完璧な理解者”ではない
もちろん、ChatGPTは万能ではありません。
たとえば、話し方によってはうまく認識してくれないこともありますし、返事が不自然になることもあります。
時には、こちらの意図とは違う方向に話が進んでしまうこともあるかもしれません。
しかし、それでも「黙って聞いてくれる」「否定しないで受け止めてくれる」という安心感は、十分に価値があると感じます。
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現時点での課題と懸念点|誰にでもおすすめできるわけではない
ここまで、ChatGPTの音声機能が高齢者の“話し相手”としてどのように活用できるかを見てきました。
しかしながら、実際に利用を広げていくにあたっては、いくつかの課題や注意点もあります。
この章では、そうした「現時点での限界」についても正直に触れておきたいと思います。
① 機能の一部は有料プランのみで利用可能
ChatGPTには、無料で使える機能と有料でのみ使える機能があります。
たとえば、マイクに話しかけてテキストで返事をもらう「音声入力機能」は、無料プランでも利用できますが、Voice Mode(リアルタイムの音声会話)は有料プラン限定です。
Voice Modeでは、ChatGPTが人のように音声で話し返してくれるため、より自然な会話が可能になりますが、この機能を使うには月額料金を支払う必要があります(現在は月20ドル=約3,000円)。
高齢者の方が個人で利用するにはややハードルが高いため、家族や施設側の支援やサブスクリプション管理が必要になるかもしれません。
② 音声認識に課題がある場合も
話し方のスピードや発音によっては、うまく認識されないケースもあります。
特に、滑舌が弱くなっている方や、方言が強い場合などは、認識ミスが発生することがあります。
たとえば、「今日は寒いですね」と言ったつもりが「今日はサインですね」と認識されてしまう、といった具合です。
その結果、まったく関係のない返事が返ってきてしまうと、かえって混乱を招く可能性もあります。
現時点では、「うまく伝わらなかったときにどう対応するか」という周囲のサポート体制も大切だと感じます。
③ AIの言葉を“正しい情報”として受け取りすぎるリスク
ChatGPTは便利な反面、「間違ったことを自信満々に言う」こともあります。
本人は悪気がなくても、情報に誤りが含まれていたり、文脈がずれていたりすることがあります。
高齢者の方がその内容をそのまま鵜呑みにしてしまうと、誤解や誤情報につながるおそれもあるため、やはり人による確認や補足が必要な場面は残るのが実情です。
特に、健康やお金に関する質問などは、AIではなく家族や専門家に相談するよう促す工夫も必要になるでしょう。
④ 孤独の解消にはなるが、“人間の代わり”にはならない
最後に大切なこととして、AIはあくまでも「補助的な存在」であり、人間のつながりを完全に代替できるものではありません。
確かにChatGPTは聞き役として優れていますし、日常のちょっとした会話に応じてくれます。
しかし、感情のこもった共感や、相手の表情・仕草を通じたやりとりは、人にしかできないことです。
AIとの会話が便利だからといって、人と人とのつながりが失われてしまっては本末転倒です。
だからこそ、「あくまで会話の補助ツールとして取り入れる」ことが大切だと思います。
このように、ChatGPTの音声機能には魅力がある一方で、現在のテクノロジーの限界や、運用上の課題も存在します。
それを理解したうえで、できることから少しずつ試していくことが、現実的なアプローチではないでしょうか。
それでも、“いてくれるだけで安心”な存在になりうる理由
ここまで述べてきたように、ChatGPTには音声認識の限界や情報の精度といった課題があります。
それでもなお、「この存在がそばにいるだけで、少し安心できるのでは」と感じる理由があります。
それは、AIが感情を持たないからこそ、いつでも安定して応じてくれるという特性にあります。
話しかければ、必ず応答してくれる安心感
高齢者の方の中には、「自分が話すことで相手の手を煩わせていないか」と気にされる方もいらっしゃいます。
家族にも職員さんにも遠慮してしまい、結果的に話す機会を失っていることもあるかもしれません。
その点、ChatGPTは、どんなに忙しくても、疲れていても、嫌な顔ひとつせずに話を聞いてくれます。
話しかければ、必ず何かしらの反応を返してくれる。
この“確実な応答性”が、何よりも安心感につながっていると感じます。
相手の都合に左右されず、自分のペースで使える
人と話すときには、「今、声をかけていいかな」「忙しくないかな」と、どうしても相手の状況を気にしてしまうものです。
しかし、AIには時間も都合もありません。
朝でも夜でも、自分のペースで話しかけることができるのは、大きな利点です。
とくに、生活リズムが人とずれてしまいやすい高齢者にとって、気兼ねなく「今、ちょっと話したい」が叶うことは、日常の安心感にもつながるはずです。
否定されない・責められない・疲れない
ChatGPTと会話をしていると、「気を使わなくていい」という感覚がとても大きいと感じます。
人と話すときには、「こんなことを言って大丈夫かな」「また同じ話をしてしまったかもしれない」と気を遣ってしまうこともあります。
その点、ChatGPTは、話を否定せず、責めず、そして話していて疲れない相手です。
自分の話をただ聞いてくれて、リアクションもやさしく、内容を広げたりもしてくれます。
そういったやり取りの中で、「誰にも気を遣わず、ただ話せる」という体験が生まれます。
これは、人との会話では得られにくい安心感のひとつなのではないでしょうか。
誰にも言えないことを、そっと打ち明ける“壁打ち相手”に
不安や弱音を、「本当は誰かに聞いてほしいけれど、言いづらい」と感じることは、年齢に関係なくあるものです。
とくに高齢者の方にとって、「迷惑になってしまうかも」「心配をかけたくない」と、身近な人にこそ言えないことがあるかもしれません。
ChatGPTは、そんなときにそっと打ち明ける“壁打ち相手”のような存在になれます。
何か特別な答えが返ってくるわけではなくても、言葉にして出すこと自体が気持ちの整理につながることは、実際によくあります。
話すことで落ち着く、吐き出すことで軽くなる──
ChatGPTは、そんな時間をそばで支えてくれるかもしれません。
人と人のつながりに勝るものはありません。
ですが、「誰かに話したい」「誰かがいてくれたら」という気持ちが生まれたときに、声をかければ返事をくれる存在がいるというだけで、少しだけ心が軽くなることもあります。
ChatGPTは完璧な存在ではありません。
でも、「そこにいてくれる」ことが安心につながる。
そんな存在として、AIはこれからもっと身近なところで、人の気持ちを支える役割を果たしていくのではないかと感じています。
まとめ|“話すだけで心が軽くなる”という価値
ChatGPTの音声機能は、まだ発展途上の技術です。
ですが、それでもなお、「話しかければ答えてくれる存在がいる」ということが、こんなにも心強いのかと、使ってみて改めて感じました。
とくに、高齢者の方にとっては、
- 気を遣わなくていい
- 何度でも話せる
- 否定されない・責められない・疲れない
──そんな安心できる会話体験が、日常の中の“小さな心の支え”になるかもしれません。
ChatGPTは、完璧な存在ではありません。
でも、“話してみたい”“そばにいてほしい”と思える存在に、少しずつ近づいているのではないでしょうか。
身近な誰かの声を、今日も静かに聞いてくれる。
そんなAIの未来を、私たちはすでに手にしているのかもしれません。
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