ChatGPTに「話しかけるだけ」で、文字起こしと要約が完了──そんな新機能「レコードモード」がついに登場。
日本語でどれくらい使えるのか、注目が集まっています。
ChatGPTレコードモードとは? “AIが耳を持った”と言いたくなる新機能
2025年6月、ChatGPTのmacOSアプリに待望の新機能が加わりました。
その名も「レコードモード」。
この機能は、ユーザーの音声を録音し、その内容をAIが自動で文字起こしし、さらに要点まで要約してくれるというものです。
マイクに向かって話すだけで、発言内容が文章になり、しかも構造的に整理される──そんな体験が、誰でも手軽にできるようになりました。
私自身、これまでさまざまな文字起こしツールを使ってきましたが、どれも一長一短があり、「これだ!」という決定打にはなかなか出会えませんでした。
そんななかで登場したレコードモードは、ChatGPT本体に録音・文字起こし・要約の機能が一体化されており、「これは一気に状況が変わるかもしれない」と直感しました。
しかも日本語にもある程度対応しており、会議、読書記録、取材など、多くのシーンで使える可能性を感じています。
ここからは、実際に使ってみた体験をもとに、その実力と課題を詳しく見ていきます。
💡なお、このレコードモードは2025年7月現在、macOS版のChatGPTデスクトップアプリかつ有料プラン(ChatGPT Plus)でのみ利用可能です。
現時点では、Windows・Web版・スマホアプリでは利用できず、使えるユーザーは限られています。今後のアップデートで、より多くの環境で使えるようになることが期待されています。
朗読で精度を検証:ChatGPTは日本語もここまで聴き取れる?
レコードモードの検証にあたり、まずは“話者が一人で発話する音声”を使って、その精度をテストしてみました。
今回選んだ素材は、夏目漱石の小説『吾輩は猫である』の冒頭部分です。
著作権の切れた作品であり、古典的な文体を含む日本語がどこまで認識されるのかという意味でも、AIの音声処理能力を試すのにぴったりな題材でした。
まずは、ChatGPTのmacOSアプリを起動し、チャット欄右に表示された◉ボタンをクリック。録音がスタートします。

そのまま朗読を始めました。内容は以下のようなものです。
吾輩は猫である。名前はまだな。
どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。…
朗読は1分ほど。終了後に「停止」を押して、「送信」をクリックすると、AIが音声を処理しはじめました。
10秒ほどで、要約された結果が画面に表示されました。ここで少し驚いたのは、初期出力が英語の要約だったことです。
しかしすぐに「この内容を日本語で表示してください」とチャット欄に入力すると、自然な日本語で要約文が再表示されました。
さらに続けてこう依頼しました。
これに対するChatGPTの応答は、まさに驚異的でした。
句読点や段落も含め、まるで原文をそのまま写したかのような文字起こし結果が表示されたのです。
精度は“驚異的”とまでは言えないが、自然な処理に感心
文字起こし結果と原文を丁寧に比較してみると、いくつかの誤変換や英語表現の混入も確認されました。
これは、おそらく私自身の滑舌や、途中で2〜3カ所つまづいて言い直した影響もあるかもしれません。
それでも印象的だったのは、言い直し部分が不自然に二重で記録されることはなく、いわゆる“ケバ取り”が自然に行われていた点です。
つまり、人が編集しなくても“読みやすいかたち”で整えてくれる処理が入っているということです。
初期出力は英語の要約だったため「対応していないのか?」と一瞬驚きましたが、「日本語で表示して」と入力すればすぐに切り替えができました。
このあたりの切り替えや応答の速さも含めて、全体的にストレスなく使える設計だと感じました。
認識精度については、「驚異的」とまでは言いませんが、音声の明瞭さ次第では、古典的な文語調にもかなりの精度で対応できる印象です。
【原文】
吾輩は猫である。名前はまだ無い。
どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて人間というものを見た。しかもあとで聞くとそれは書生という人間中で一番獰悪な種族であったそうだ。この書生というのは時々我々を捕えて煮て食うという話である。しかしその当時は何という考もなかったから別段恐しいとも思わなかった。ただ彼の掌に載せられてスーと持ち上げられた時何だかフワフワした感じがあったばかりである。掌の上で少し落ちついて書生の顔を見たのがいわゆる人間というものの見始であろう。この時妙なものだと思った感じが今でも残っている。第一毛をもって装飾されべきはずの顔がつるつるしてまるで薬缶だ。その後猫にもだいぶ逢ったがこんな片輪には一度も出会わした事がない。のみならず顔の真中があまりに突起している。そうしてその穴の中から時々ぷうぷうと煙を吹く。どうも咽せぽくて実に弱った。これが人間の飲む煙草というものである事はようやくこの頃知った。
【ChatGPTによる文字起こし】※赤字=誤変換/認識ミス箇所
我輩は猫である。名前はまだない。どこで生まれたかとんと見当がつかない。何でも薄暗いジメジメしたところでニャーニャーと鳴いていたことだけは記憶している。我輩はここで初めて人間というものを見た。
しかも後で聞くとそれは書生という人間中で一番同枠な種族であったそうだ。この書生というのは時々我々を捕まえて煮て食うという話である。しかしその当時は何という考えもなかったから冗談恐ろしいとも思わなかった。ただ彼の手のひらに乗せられてスーッと持ち上げられた時、なんだかふわふわした感じがあったばかりである。手のひらの上で少し落ち着いて書生の顔を見たのがいわゆる人間というものの見始めであろう。このとき妙なものだと思った感じが今でも残っている。第一毛を持って装飾されべきはずの顔がつるつるしてまるで夜間だ。
その後猫にもだいぶあったがこんな方には一度も出くわしたことがない。のみならず顔の真ん中があまりに突起している。そしてその穴から時々プープーと煙を(吹く)。どうも無性っぽくて実に弱った。これが人間の飲むタバコというものであることはようやくこの頃知った。
検証から見えたポイント
- 日本語の朗読でも、文脈・構成を保ったまま自然に文字起こしできる
- 言い直しや軽いつまずきは自動的に補整(ケバ取り)が行われる
- 古典的な語彙や文体にもある程度対応可能
- 要約/全文表示の切り替えも、プロンプト次第で自由自在
- 読書記録・ナレーション原稿・朗読ブログなど、応用の余地は大きい
従来の文字起こしアプリでは、録音後に手作業で整形・編集するのが当たり前でした。
それを考えると、ChatGPTレコードモードは“録音から整形されたテキストまでがワンストップ”で完了するという意味で、実用性の高さが光る存在だと感じました。
今回と同じ朗読音声を、他の文字起こしAIでも試してみました。
気になる方はこちらの記事もぜひご覧ください👇
PLAUD NOTE・CLOVA Noteで文字起こし精度を比較してみた
複数会話音声を録音して検証:実際の精度と進化の余地
朗読に続き、ChatGPTレコードモードの可能性をさらに探るため、今回は複数人による日本語の会話音声を録音して試してみました。
会話の中には複数の話者が登場し、感情表現や間の取り方も含まれる、自然な流れのやり取りです。録音時間は約1分半。発音の明瞭さや抑揚も意識しながら実施しました。
会話の大枠は把握、繊細な表現はまだ発展途上
録音の送信からわずか数秒で、要約と文字起こしが表示されました。
まず驚いたのは、全体の話の流れやトピックがきちんと要約に反映されていた点です。会話の展開や主な内容が自然に構造化されており、「何について話していたか」をつかむには十分な精度でした。
一方で、細かい部分にはいくつか気づきもありました。
- 強い感情がこもった日本語の発言が、部分的に英語として起こされる現象が見られた
- 音声が重なったり、聞き取りづらい場面では、「スピーカー不明」や省略の表現が使われることがあった
- 数名が交互に発言するような会話では、実際の話者と「Speaker 1」「Speaker 2」などのラベルが対応していないと感じる場面もあった
こうした点は、逆に言えば「どこが今後改善されていくと、もっと自然になるか」が見えてくるポイントでもあります。
話者分離や細部の認識は、これからに期待
現時点では、日本語会話における完全な話者識別や文脈に応じた細やかな聞き取りは、まだ発展途上の段階かもしれません。
ただし、全体像の把握や要点の抽出という意味では、実用レベルの手応えを感じました。
何より、録音して話すだけでここまで処理できるのは驚異的です。
聞き手のニュアンスや背景を含んだ複数話者の会話をAIが理解・要約しようとしているその姿勢から、「これは伸びる」と直感的に思えたというのが率直な感想です。
今後のアップデートで、話者ごとの発言の整理や日本語独特のリズム・文体の処理が強化されれば、レコードモードは文字起こしツールとしてだけでなく、“会話の理解と再構成”ができるAIメモ係としても活躍するようになるはずです。
実際に使って見えてきた活用シーンと、今後に期待する改善ポイント
ここまで、ChatGPTレコードモードを日本語の朗読音声や会話音声で試した体験をご紹介してきました。
実際に使ってみることで、この機能の“すごさ”と“惜しいところ”の両方が浮かび上がってきました。
この章では、現時点でのレコードモードの活用可能性と、今後のアップデートに期待する点を、実用的な視点から整理してみます。
ChatGPTレコードモードは、どんなシーンで使える?
1. 音声メモ → 思考整理
自分の考えを声に出して録音し、その内容を要約・構造化してくれるのは、「考える時間」を記録として残す手段として非常に有効です。
ブレインストーミングやアイデアメモ、日々の振り返りなど、頭の中にある断片を“文字として客観視できる”ことは大きな強みです。
2. 読書・朗読記録
今回試したように、文学作品や台本の読み上げを録音し、文字起こし+要約することで、「読みっぱなし」にならない読書体験が可能になります。
読んだ内容を要点で振り返ることができ、音声とテキストの両方で記録できるのは学習効果も高そうです。
3. 会議・セミナーの要点抽出
複数人の会話であっても、全体の流れや発言のトピックは自然に要約されるため、議事録や報告資料のベースとしても活用できます。
現時点では話者分離が不完全ですが、要点の整理には十分使える精度がありました。
4. 音声→文章変換での“たたき台”づくり
ポッドキャストやYouTube、講演などの音声素材を、まずはAIに聞かせてざっくり要約させることで、原稿・スクリプト・キャプションの“たたき台”を効率よく生成できます。
特に強く感じた「改善してほしい点」
レコードモードの処理能力そのものには非常に高い満足感がある一方で、「なぜこれができないのか?」と感じた点も明確でした。
特に以下の2点は、2025年7月現在では未対応のため、実際の使用場面において制限を感じる場面がありました。
今後のアップデートで対応されれば、利便性はさらに高まると感じています。
① 対応プラットフォームの限定解除
現時点でレコードモードが使えるのは、macOSのChatGPTデスクトップアプリ限定です。
WindowsやWeb版、スマートフォンアプリ(iOS/Android)では利用できません。
これは非常に惜しい点です。
録音・音声入力という機能は、むしろスマートフォンやノートPCのほうが利用頻度が高い場面が多く、仕事中のメモ、移動中のアイデア記録、対面会話の記録など、多様なシーンで使いたくなります。
→ 今後の展開として、Web・Windows・モバイル(iOS/Android)での対応拡大が進めば、この機能の価値は何倍にも広がると確信しています。
② 音声ファイルのアップロード対応
現行のレコードモードでは、「リアルタイムで録音した音声」しか処理対象にできません。
つまり、すでに録音済みの音声ファイル(例:mp3 / wav / m4a / mp4など)を読み込んで処理することはできないのです。
これは非常に大きな制限です。
会議の録音やZoomの録画音声、スマホで録音した講演・授業・取材など、すでに手元にある音声資源を活用できないのは非効率です。
音声ファイルをアップロード → AIが文字起こし・要約
という流れが整えば、ChatGPTは「最強の音声アーカイブ処理ツール」へと一気に進化します。
その2つが整えば、“実務ツール”として普及できる
この2点(マルチデバイス対応/音声ファイル読込対応)が実現されれば、ChatGPTレコードモードは文字起こしツールの域を超えて、日常業務や情報整理のスタンダードな手段になり得ると感じました。
まとめ:ChatGPTレコードモードは、“話すだけで整理してくれるAI”の第一歩
ChatGPTのレコードモードを実際に使ってみて感じたのは、
「話すだけでAIが内容を理解し、要約し、構造化してくれる」という未来が、すでに始まっているということです。
✔ 音声→テキスト変換がここまで進化していた
- 朗読(夏目漱石のような文語文)もきれいに文字起こし
- 要約だけでなく、プロンプト次第で全文表示にも対応
- 会話音声でも全体の流れや意味はしっかり把握
- 操作はとにかくシンプルで、UIも直感的
- 日本語対応も実用範囲内で、実務への応用が見込める
✔ 改善が必要と感じたポイント
- macOSアプリ限定という利用環境の狭さ
- 音声ファイルの読み込み不可という柔軟性の欠如
これらが解消されれば、ChatGPTレコードモードは業務・学習・個人メモ・音声コンテンツ編集などあらゆる領域に浸透していく可能性を秘めています。
✔ どんな人におすすめ?
利用者層 | 活用例 |
---|---|
学習者・講師 | 音読の記録、読書の整理、口頭説明の反復練習 |
ブロガー・ライター | アイデアメモ、スクリプト起こし、構成のたたき台 |
ビジネスパーソン | 会議メモ、顧客対応メモ、議事録ベースづくり |
ポッドキャスター | 音声→文章変換、YouTube字幕・概要文作成 |
✍ 編集後記
この記事は、生成AIを日常生活に取り入れるための実用ガイド「猫でもわかるChatGPT」(https://www.tokachi-ichiba.com/)編集部が、自らの検証体験に基づいて執筆しました。
AIは“使う人”次第で、情報収集から思考整理、仕事効率化までさまざまな形で活躍します。
ぜひ一度、あなた自身の“声”でChatGPTに話しかけてみてください。
その一言から、あなたの中にあるアイデアや想いが、驚くほどクリアに言語化されて返ってくるはずです。
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